日本の国語教育第一人者として活躍した大村はまさん(2005年没)の随筆で、ノルトエッセンは「心のパン屋さん」と紹介されています。


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  ▼大村はま先生と

早川哲雄・素子夫妻 


大村はま先生との思い出を綴ったエッセイ①  by  早川哲雄

ノルトエッセンの店主、早川哲雄が綴った7編のエッセイは、大村はまさんの業績と思想を学び実践する研究団体『大村はま記念国語教育の会』の会報「はまかぜ」に連載されたものです。 


札 幌

札幌を東西に貫く"大通り"は札幌に来たことのない人でも知るほどつとに名高い。最近では都市の中の公園として外国に対しても札幌の誇らしげな象徴となっている。しかし、"大通り"は札幌に住んでみるといいことずくめという訳にはいかない。結構不便なところもあったりするが、札幌の顔としての評価は変わらない。

 

それに10年ほど前から始まった冬のイルミネーションの美しさは、冬の雪や寒さがもたらす暗さ、辺境などの重たいイメージから、そこに住む人々自身を解放したように思われる。イルミネーションの輝く大通りは、周辺の山々のゲレンデのオレンジ色のライトと共に北国の生活を変えている。大通りのイルミネーションもゲレンデのライトも雪の夜には透き通って美しいし、オーロラのように神秘的である。誰が考え出したか、誰が北国の雪明りの路を、イルミネーションやライトアップの商品化された美しさに変えて良いとしたのか。漠然とした消費社会の冷たさを滲ませながら、時代が古く暗い時代とは急速に切り離されて、哀しいほど極限まで浄化されていくような孤独感を強いてくる。

 

はま先生の叔父である小川二郎氏が札幌の五番館というデパートを建て、大通りという都市計画を立案した時、時代は未だ拓かれたばかりであり、帝国は若く教育は解答をひとつも持ってはいなかった。すべてが正解に成り得た逞しくおおらかな時代でもあった。描かれた絵にも時代や人の意志がみなぎっている。

 

パン屋を始めてから3年ほど経ってから、偶然の機会から五番館デパート(現在は五番館西武)の〈北海道味の百選会〉や〈全国味百選〉などの催事に出店するようになった。もう今では創立者やそのゆかりの者との因縁やこだわりなどは何の意味も持たなくなった時代なのかもしれないけれど、「五番館」と言ったとき、私や素子さんの心の中にははま先生に繫がる特別な何かが反応する。北海道という風土やそこで「生業」を起こした人の気風やいろいろの思い出が、遠い時間のかなたからシグナルを立ち上がらせる。

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ノルトエッセン

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